約 967,491 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/742.html
「キュアエコー ニューステージ 後編 思いの力」/アクアマリン 「う~ん、これぞ最高の贅沢」 ナマケルダは混乱のさなかにある町を見下ろしながらカビの上で寝そべっていた。この町が理想郷と化すのも時間の問題だろう。 「サイアーク、このまま一気に町を…」 そう言いかけた時だった。 「ダメーーーッ!!」 突然、何者かの声がすると同時にサイアークはバランスを崩して倒れた。 「何っ!?」 自分の楽しみが突然邪魔されたことに驚いたナマケルダがその声の聞こえたほうを見ると、そこにいたのはこれまでに何度も自分の邪魔をしてきた伝説の戦士、プリキュアだった。 キュアエコー ニューステージ 後編 思いの力 キュアエコーはサイアークに体当たりを食らわせてカビの放出を止めると、サイアークとナマケルダに向かって言った。 「やめて!これ以上この町の人を苦しめないで!」 「フン、あなたこそ私の邪魔をしないでもらいたいですな。サイアーク」 そう言ってナマケルダはサイアークに攻撃を命令した。 「サイアーク!」 扇風機型のサイアークはエコーに向かって拳を叩き込んだ。 「くっ!!」 エコーは両手で攻撃をなんとか押さえ込むと反撃に移った。再び拳を向けて襲い掛かるサイアークに向けて拳を叩きこむ。 「うっ!!」 拳越しに伝わる敵の力は想像以上に強い。それでも負けるわけにはいかない。エコーは一度その場から離れると体勢を立て直し、再びサイアークへと向かっていった。 「たああっ!」 サイアークの拳をかわしその隙に反撃を加えた、はずだった。 「えっ!?」 突然、サイアークは透明になったかのように姿を消した。エコーが辺りを見てどこに行ったのか探していると、自分の周りに黒い影が浮かんでいるのに気づいた。 とっさにその場を離れるとサイアークの体当たりがビルの屋上を大きくえぐった。エコーは近くのビルの屋上に飛び移るとサイアークもエコーを追って飛び移ってきた。 (何とかして、止めないと) エコーはサイアークの攻撃をかわしながら、なんとか反撃に転じるチャンスをうかがっていた。 その頃、サイアークから逃げていた町の人たちもこの事態に気づき始めた。 「ねえ、あれって…」 そう言って誰かが指さした方向を見るとそこには扇風機を模した怪物、サイアークに立ち向かう1人の少女がいた。 「おい!あれは…」 「ああ、間違いない」 「プリキュアだ」 この町にプリキュアが現れ、戦っている。そのことに気づいた人たちは、まるで心に一筋の光が差し込んだような気分になり、少しづつ希望や笑顔を取り戻していった。 一方、ビルの屋上から屋上へと飛び移りながらサイアークの攻撃をかわしていたキュアエコーはサイアークに反撃を加えるチャンスを待っていた。 「フン、逃げてばかりでは勝てませんぞ。サイアーク」 そう言ってナマケルダはサイアークに更に追い詰めるように命令した。 「サイアーク!」 サイアークはエコーが立っているビルへと飛び移り、エコーに拳を振り下ろそうとしたが、着地の時に一瞬バランスを崩した。 (今だ!) エコーは続けざまに拳を叩き込むとサイアークの反撃をかわし、一回転しながらかかと落としを食らわせた。 このままいけば勝てるかもしれない。エコーは一瞬そう考えたが、事態はそう甘くはなかった。 サイアークは扇風機の羽根を回転させると、高速回転する羽根を何枚も打ち出した。 「うわっ!」 エコーは慌ててかわし、羽根はビルを刃のように切り裂いていく。もし直撃していたらタダでは済まなかった。そう思い、肝を冷やした時だった。 (あっ!!) 羽根によって切断されたビルの大きな破片がビルの近くにいる人に直撃しそうになる。 (いけない!) エコーはビルを駆け下りながら、次々と破片を打ち砕き、砕ききれなかった巨大な塊を両手で受け止めた。 「みんな、早く逃げて!!」 「はっ、はい!」 エコーがすぐに逃げるように言うと、足がすくんで動けなかった人たちも慌ててその場を離れる。 エコーが一安心した時だった。 「隙だらけですぞ」 「えっ?」 エコーがナマケルダの声に気づいた時はもう手遅れだった。 「サイッ!!」 いつの間にか地上に降りたサイアークが伸ばしたコンセントのコードによってエコーは完全に身動きができなくなってしまった。 「くっ!!」 エコーは必死に拘束から抜け出そうとするが、自分の動きを封じているこのコードはびくともしない。 「サイアーク、やっておしまい」 罠にかかった獲物を見るような目つきでエコーを見ると、ナマケルダはとどめを刺すように命じた。 「サイアーク!」 サイアークはコードを振り回し、エコーをビルに叩きつけた。 「きゃあああっ!」 そして、サイアークは飛び上がると力なく落ちていくエコーに向かって拳を叩き込み、受身を取ることもできないままエコーは道路に叩きつけられた。 その光景を目撃した人たちは一斉にエコーの方へ向かい、身動き一つしないエコーに必死に呼びかけた。 「プリキュア!」 「大丈夫か!」 「しっかりして!」 その声でエコーは意識を取り戻した。 「うっ…」 うっすらと目をあけると、目の前にはさっきキャンディをあげた女の子がいた。 「おねえちゃん、大丈夫?」 「だ…だいじょうぶ」 こんな状況で言っても何の説得力もなかったが、それでも言わずにはいられなかった。 「だから、早く逃げて」 「ヤダッ!!」 「えっ!?」 予想外の答えにエコーは目を丸くする。その子は目に涙を浮かべながらも力強く言った。 「だって、だっておねえちゃんこんなにボロボロになって戦ってるじゃない!」 「ああ、そうだ」 隣にいた若い男性も続けるように言う。 「それなのに、俺たちだけ黙って逃げるなんてできるわけないだろ!」 「私たち、応援することくらいしかできないけど私たちに出来る事を精一杯やりたいの!」 「みんなも同じだよな」 そう言うと周りの人たちも一様に強く頷いた。 「みんな…」 思いがけずかけられたその言葉にエコーの目には涙が浮かんだ。もちろん今は泣いている場合ではない、今やるべきことは一つ。 あゆみは涙を拭くと立ち上がり、みんなのほうを向いて言った。 「ありがとう」 「ほお、まだ立ち上がりますか。サイアーク」 歯牙にもかけないような口調でナマケルダはサイアークにとどめを命じた。 「サイアーク!」 サイアークはエコーに向かって飛びかかり拳を叩き込んだ。エコーは両腕を交差して受け止め、そしてサイアークの腕を掴むと大きく投げ飛ばした。 (今のは…) エコーは自分のしたことが信じられないかのように両手を見つめた。さっきまでとは違う、まるで自分が光のベールに包まれているように感じられた。 「頑張れー!!」 ふと後ろを振り向くと町の人たちが自分を応援していた。 「プリキュアー、頑張ってー!!」 「負けるなー!!」 「俺たちがついてるぞー!!」 「プリキュアー!」 ある人は路上から、ある人は避難場所から、またある人はテレビの画面越しにキュアエコーを応援していた。 そしてその声が大きな力となり、自分を突き動かしているということが今のエコーにはわかった。 「何ですかな、この耳障りな声は。サイアーク」 「サイアーク!」 ナマケルダに命じられてサイアークはエコーもろとも消し去ろうとするかのように高速回転する羽根を何枚も打ち出した。 「させない!」 エコーはサイアークに向かって駆け出すと手刀で次々と羽を切り裂いていった。 「サイアーク!」 そしてサイアークの拳を足元に滑り込んでかわすと足払いでサイアークのバランスを崩し、その隙に連続で拳を食らわせる。 「サイッ!?」 サイアークはこの攻撃によって大きく力を弱めたが、まだ反撃する余力は残していた。 「サイアーク!」 サイアークは再びコードを伸ばし、エコーを捕らえようとした。エコーはコードを足場にしてサイアークの頭上を飛び越え、サイアークの後ろに回った。 「サイッ!」 サイアークはコードをエコーのほうに向けて伸ばすが、その度にエコーは右横、左横、前方と素早く移動する。そうしてエコーを追いかけているうちに、いつの間にかサイアークは自分が出したコードによってがんじがらめになっていた。 「たああっ!」 そして、エコーは身動きの取れなくなったサイアークに強烈な回し蹴りを食らわせ、サイアークは大きく吹き飛んだ。 「何をしている、サイアーク。やれ!」 「サ、サイ~」 ナマケルダは余裕をかなぐり捨てた声でサイアークに命令したが、サイアークはもはや立ち上がる気力すらない。勝負の趨勢は誰が見ても明らかだった。 エコーは1度エコーデコルを握り締めると、自分を見守り、支えてくれる全ての人を思い浮かべながら手のひらに力を込めた。 「思いを1つに、プリキュア」 そして、全身からみなぎるエネルギーを手のひらに集中させ大きな光弾を作り 「シンフォニーフラッシュ!!」 サイアークに向けて解き放った。 「ゴ~クラ~ク…」 エコーの必殺技を食らったサイアークは浄化され、鏡に囚われた人は意識を取り戻し、カビに覆われた町は元通りになった。 「くっ」 ナマケルダは一瞬苦虫をかみつぶしたような顔を見せたが 「まあいい、また別の町に行けば済むことですぞ」 そう言い捨てると、どこかへ消えていった。 今度こそ一件落着となり、エコーが一息つくと 「プリキュアー、ありがとう!」 後ろではすっかり笑顔を取り戻した町の人たちが大きく手を振りながら、エコーに感謝の声を送った。エコーはその声に応えるように頷くと、地面を蹴りビルの谷間へと姿を消した。 「昨日のプリキュアの活躍すごかったよね~」 「うんうん、アタシ感動しちゃった~」 「ホントすごいよねー、あゆみ」 「う、うん」 翌朝、登校中のあゆみたち4人の話題はもちろん昨日町を襲った怪物とプリキュアとの戦いのことだった。 「あの必殺技もカッコよかったよね~、何とかビームだっけ」 「プリキュアシンフォニーフラッシュ?」 「そうそう」 あまりに素早く即答してしまったのであゆみは正体がバレてしまうのではないかと一瞬焦ったが、幸い深く突っ込まれることもなかった。 「あの白いプリキュアってホントカッコイイよね~。あの怪物を1人で倒しちゃうなんて」 (ううん、1人じゃないよ) あゆみは心の中で呟いた。 あの時、自分は1人じゃなかった。自分の思いが町の人たちに伝わり、町の人たちが応えてくれた。 だからこそ自分は今までにない力を引き出し、幻影帝国から町やみんなを守ることができた。あゆみはそんな風に昨日の出来事を考えていた。そして、それは変身して戦うときだけではなく、この日常でも同じだということにも気づいた。 そんなことを考えながら歩いているとあゆみはある事に気がついた。 「あゆみ、どうしたの?」 「うん、ちょっとあれが気になって…」 そう言ってあゆみが指差したほうには1枚の葉っぱが落ちていて、その下で何かがもぞもぞと動いている。 「うそ、もしかして毛虫?」 あゆみの友達が不安げな声を浮かべる中、あゆみはゆっくりと近づき、葉っぱをどけた。すると葉っぱの下には一匹の毛虫がいた。 「もう大丈夫だよ」 そう言うと毛虫はゆっくりとどこかへ移動し始めた。その様子を見るとあゆみは急いで友達のほうへ戻った。 「みんな、ゴメン。待たせちゃって」 「あゆみ、毛虫平気なの?」 「ううん、そうじゃないけど…」 別に平気ということはない。ただ、この状況があまりにもあの時と似ていたのでもしかして、と思ったからだ。 あゆみが期待したようなことは起こらなかったけどそれでもよかった。フーちゃんはこの町であゆみを見ている。そして、きっとこの光景を見て喜んでくれるに違いない。そういう風にあゆみは考えた。 「それじゃ、行こっか」 「うん!」 「ところで、あゆみ英語の宿題やった?」 「うん、やってきたよ」 「ヤバッ!忘れてた」 「そうなの?」 「ねえ、あゆみ~。写させて~」 「えーっ、そんなのダメだよ」 「も~、あゆみのケ~チ~」 こうしてあゆみたち4人はたわいもない話に花を咲かせながら、学校への道を歩いて行った。 ―また、新しい1日が始まる。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1515.html
公園で握手 「そうと決まればお花見だ!!」 なぎさの一声で全員集合のお花見が決まった。 参加者は 50人を超える。だが、作業をする人もそれだけいる、ということであり、準備は意外にスムーズに進んだ。 問題は当日。自己紹介の時間が長い、ということだった。特に、プリキュアになったばかりの星奈ひかるたちは、一度に 50人を覚えなければならず、見るからに混乱していた。例外は羽衣ララで、「記録は AI に任せればいいルン」と涼しい顔である。 「星奈ひかるです」 「坂上あゆみです」 「…」 ひかるは、あゆみを顔をしばらくのぞき込むように見ていた。 「あの」 「その声!」 「え?」 「ミラクルライトの人だよね!!」 「…え?」 驚くあゆみをよそに、ひかるは自分の仲間を呼んだ。 「ララ! えれなさん! まどかさん! ミラクルライトの人、ここにいたよ!!」 その三人が驚いた顔で集まって来る。 「あの」 「聞こえてた!」 「聞こえてました!」 「聞こえてたルン!」 「な…に…が…ですか?」 「わたしたちはここにいる!」 ひかるが叫ぶと、ほかのプリキュアたちも集まってきた。 「わたしたちはあなたの仲間!」 「あなたの友達!」 「すごくうれしかったルン!!」 「え…」 困惑するあゆみと、目をキラキラさせているひかるたち。ゆかりが後ろに立った。 「つまり、思いがつながったのよね。 キュアエコーと」 「えっ?!」 「坂上さんがキュアエコーだったんだ! きらヤバ~!!」 ひかるの声はさらに大きくなる。 「そうですけ――」 「ありがとう!!」 ひかるはあゆみの手を両手で握った。ありがとう、と言いながら、何度も振る。 「あの」 「だって、ゆかりさんが、キュアエコーが助けてくれないとどうにもならないって」 「すごく不安だったルン」 「そんな言い方はしてないわよ」 「ほんとうにありがとう!!」 みなが笑う。マナがありすの腕をつついた。 「ありす、あゆみちゃん、取られちゃうよ」 「あゆみさんはいつも人気者ですから」 「はやくツバつけておかないと。四葉にスカウトするんでしょ?」 「え…えぇっ?!」 あゆみの悲鳴が上がる。 「セバスチャンがあゆみさんをとても高く買っているのです。 おふたりで新しいプリキュアチームを結成する、というのはどうですか?」 それぞれがキュアエコーとキュアセバスチャンの組み合わせを想像した。何人かが吹き出したが、黄瀬やよいが難しい顔をしている。腕を組んで考え始めた。 「あ、やよいちゃんの創作スイッチが入った」 「あかんて。今日は花見やんか…」 同じく難しい顔をしていたグレルが、プルンスの体を剣でつつく。 「何するでプルンスか!」 「お前、タコじゃないのか」 「プルンスは宇宙妖精でプルンス!」 フワはエンエンの額の模様が気に入ったようで、手で撫でたり唇で触れたりしていた。 「フワ…フワ…フワ!」 「くすぐったいよ…」 そのかわいらしい様子に皆の笑顔がこぼれる。 ひかるたちに何度も感謝されているあゆみだけが困っていた。
https://w.atwiki.jp/0103/pages/57.html
「凄い雨だな……」 雨の冷たい空気が肌に突き刺さる中、桃園ラブは呟く。 一見すると、どこにでもいる普通の女子中学生である彼女だが、実は伝説の戦士プリキュアだった。 全パラレルワールドの支配を企む管理国家ラビリンスを相手に、フレッシュプリキュアとなって戦って、本当の平和を取り戻した。幼馴染の蒼乃美希や山吹祈里、親友の東せつなと力を合わせて何度も危機を乗り越えた。 その矢先にこんな大事件が起きてしまい、ラブば落ち込んでしまう。天真爛漫な彼女でも、この一大事では笑えるわけがない。 「イースと……せつなとぶつかり合ったあの日も、こんな大雨だったね……」 窓ガラスにぶつかる大量の雨水を見て、ラブはひとりごちる。 ラブの脳裏に浮かび上がるのは、今でも忘れられないあの日の出来事。かつて、せつなはラビリンスの幹部イースであり、友達のふりをしてラブに近づいていた。 せつながイースと知って、大きなショックを受けたけど……ラブはイースと戦った。イースの悪事を、そしてせつなの目から流れる涙を止めるために。 あの日の大雨は、まるでせつなの悲しどんな願いでも叶えると謎の老婆は口にしたけど、ラブには信じることができない。みのようだった。 「……あの帆高さんって人は、陽菜さんのことを探しているのかな?」 いつの間にか連れてこられた劇場で公開された映画では、『森嶋帆高』と呼ばれた男の人が『天野陽菜』という女の人を取り戻す為に走っていた。 帆高が陽菜の為、精一杯頑張る姿がたくさん映し出されていて、ラブも胸が高鳴った。自分を信じて、完璧になろうと頑張る人は応援したいし、幸せゲットできるお手伝いをしたいと思う。 だけど、怪しいおばあさんはこの世界に集められた人達に、帆高の命を奪わせようとしていた。しかも、帆高と陽菜が再会したら、ラブを含めた大勢の人を犠牲にしようとしている。 絶対に許せない。 「帆高さんと陽菜さん……それに、みんなが幸せゲットできるように頑張らないと!」 ラブは自分に言い聞かせる。 どんな願いでも叶えると謎の老婆は口にしたけど、とても信じられない。一方的に人の命を奪う程に冷酷だから、明らかに罠としか考えられなかった。 これまで、キュアピーチとして多くの幸せを守ったように、みんなで幸せになれる方法を見つけたい。ここでも、その気持ちを変えるつもりはなかった。 「とにかく、まずは帆高さんを探さないとね!」 まずは帆高を見つけて守ることが最優先だ。 彼が多くの人から命を狙われるなら、キュアピーチに変身する必要がある。リンクルンはこの手にあるから、どんな敵が来ても帆高を守ることができる。 「できれば、傘があるといいんだけどな……ん?」 手元に置かれていたデイバッグのファスナーを開いた瞬間、真っ先に出てきたのはフィギュアだった。 可愛らしいコスチュームや髪飾りを身に身に纏った女の子で、プリンセスと呼べるイメージがある。女の子はもちろん、幅広い年齢層にも高い人気がありそうだ。 何よりも、ラブもそのフィギュアから目が離せない。初めて目にしたフィギュアなのに、強い親近感すら抱いた。 まるで、自分自身を見ているかのようにも錯覚する。 「えーっと……プリストロベリーの激レアフィギュア。人気アニメ、フラッシュ☆プリンセスの主人公……アブちゃんの変身した姿……?」 「そ、そのフィギュアは……!」 「えっ?」 備え付けられていた説明書を読んでいたラブの耳に、男の声が響いてくる。 振り向いた瞬間、金髪の男の人がいつの間にか立っていた。ややつり目で、背丈もそれなりに高く、帆高とほぼ同い年に見える。 そんな彼は、頬に汗を流しながら震えていた。 「……ぷ、プリンセスストアに朝一で並んでも手に入るかどうかわからない、鬼激レアフィギュアじゃないスか……!?」 「知っているんですか? この子のこと」 「……オレ、大ファンなんス。何があっても、己の道を突き進んでみんなのために頑張ったプリンセスが。俺だけじゃなくて、極道さん……俺の大事な友達(ダチ)も、プリオタなんスよね」 「……なら、よろしければ差し上げましょうか? そんなに大切に想っているなら、このアブちゃんって子も喜ぶと思いますし」 「マジスか!? えっ……お気持ちはありがてーんスけど、めっちゃ鬼激レアフィギュアっスよ!? たぶん、今を逃したらもう手に入らないかも……」 「レアなら、尚更ですよ! あなただけじゃなく、あなたのお友達もアブちゃんを大切にしてくれるなら、あたしだってプレゼントしたいですし!」 「……マジサンキュっス!」 アブちゃんのフィギュアを渡した途端、男は背筋を伸ばしながら敬礼をしてくれる。 見た目はちょっと不良みたいだけど、いい人であるのは確かだ。 「私、桃園ラブって言います! あなたは?」 「……多仲忍者。"忍者"と書いて忍者(しのは)って読むっス。ただの高校生(コーボー)っスよ」 「忍者!? カッコいいお名前ですね~!」 「あざっス。ラブちゃんも、キュートっすよ」 金髪の男……多仲忍者を前に、ラブは目を輝かせた。 だけど、忍者は自分の頬をペタペタと触っている。 「……やっぱり、笑えねー」 「えっ?」 「オレ、昔から笑うのが苦手なんス。今だって、激レアフィギュアを譲ってもらったのに、全然笑えねえ……ラブちゃんに失礼なのはわかっているのに、笑えねえんスよ」 忍者の表情は固いが、悲しみに染まっていることはラブも察する。 「無理して笑わなくていいと思いますよ」 だから、ラブは微笑みを向ける。 「誰だって苦手なことはありますし、無理をしたら余計に笑えなくなりますって。それに今は、こんな状況ですから」 「確かに、今はこんな訳わかんねーことになってるっスね。ラブちゃんはオレのことを警戒しねーんスか?」 「うーん、いきなり声をかけられた時は驚きましたけど……忍者さんは私を傷付けてないじゃないですか! だから、優しい人だと思っています!」 忍者を前に、ラブは自分の気持ちを叫んだ。 彼が悪人であれば、いつでも不意打ちを仕掛けることができた。でも、忍者はアブちゃんのフィギュアに心を躍らせていたから、優しい人のはずだ。 忍者の手の中にいるアブちゃんは、今も元気よく笑っている。この笑顔が、忍者の支えになっているはずだから、彼を疑うことはできなかった。 「いい子なんスね、ラブちゃんは。アブちゃんみてーっス」 「そうなんですか!? いや~! 私も、そのアブちゃんに親しみを持っちゃうんですよね! なんだか、他人の気がしなくて……」 「なら、オレのとっておきの曲を聞かせるっス!」 忍者は懐からスマホを取り出す。 軽やかに操作をした瞬間…… 『フラッシュプリンセ~ス!』 「わあっ!?」 明るくて、前向きなテーマソングが流れ始める。 「これが、F(フラッシュ)☆プリンセスのOPテーマっス!」 熱く語る多仲忍者の表情は変わらない。だけど、瞳からは純粋で真っ直ぐな輝きが放たれていると、桃園ラブは感じた。 ◆ 多仲忍者は忍者(にんじゃ)であり、プリオタである。 国民的人気アニメプリンセスシリーズは全話欠かさず視聴しており、内閣総理大臣・愛多間七にプリンセス達を布教する程のプリオタだった。 そして同時に、アコギな真似をやらかす極道(ごくどう)たちと殺し合う忍者(にんじゃ)でもある。故に、忍者にはこの殺し合いを許すことはできなかった。 許可もなく、人に映画鑑賞を強制した挙句に、出演者の命を奪えと戯言を口にするクソババアになど従える訳がない。だが、あのババアは只者ではないことも事実だ。 もしかしたら、極道の連中もどこかに潜んでいるかもしれない……そう思った矢先、桃園ラブという少女を見つける。 彼女は撫子アブとは正反対で、天真爛漫で前向きな少女だ。それでいて、オタに理解がある……もう少し年齢が上だったら、オタクに優しいギャルになっているだろうか。 だからこそ、彼女の命を奪えるわけがない。 (見ているか、ババア? オレはテメーの思い通りにはさせねえ……テメーも、汚え極道どもも、オレの手でブッ殺してやる。このオレを呼んだのが、運の尽きだと思え) 能面のような表情の裏で、地獄の業火の如く殺意を忍者は燃やす。 決してラブには悟られないように。彼女のようなJCは、血生臭い世界など知る必要はない。 極道みたいな連中は帆高を殺そうとするだろう。故に、早急に帆高を保護し、彼を狙う連中を殺さなければいけない。 ババアは帆高を殺さなければ、忍者達が死ぬと脅しをかけてきたが、関係ない。 (オレは迷わねー! ラブちゃんも、帆高も殺させねえ……そうしねーと、オレの今までが嘘になるし、極道さんもガッカリさせちまう…… 極道さんも、こうするっスよね?) フラッシュ☆プリンセスのOPが響く中、忍者は偉大なる友達(ダチ)である輝村極道(きむらきわみ)の優しさを思い出していた。 彼は立派な大人だ。こんな不愛想なガキを前にしても、満面の笑みをいつも見せてくれるし、時には一緒に涙を流してくれている。 もしも、ラブや帆高を守れなかったら、極道を失望させる。彼の期待を裏切らない為にも、迷う訳にはいかなかった。 友達(ダチ)と信じた大人の、本当の顔を知らないまま…… 「忍者さん、素敵なテーマソングですね!」 「こんなもんじゃないスよ? アブちゃんの親友にして宿命のライバル、ヒース様のキャラソンだってマジパネエっスから!」 桃園ラブという優しい少女を守り、そしてプリンセスシリーズを布教する。 今はまだ、笑うことができなくとも、多仲忍者の真っ直ぐな想いは変わらなかった。 【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 [状態] 健康 [装備] リンクルン@フレッシュプリキュア [道具] 基本支給品、ランダム支給品1~2 [思考・状況] 基本方針:みんなを守れる方法を見つけたい。 1 まずは忍者さんと話をする。 ※最終回後からの参戦です。 ※キュアブラック、キュアホワイトについて知っているかどうかは不明です。 【多仲忍者@忍者と極道】 [状態] 健康 [装備] 不明 [道具] 基本支給品、プリストロベリーの鬼激レアフィギュア@忍者と極道、ランダム支給品1~3 [思考・状況] 基本方針:あのクソババアの思い通りにはさせない。 1 まずはラブちゃんや帆高を守り、そして二人を襲う奴らをブッ殺す。 ※少なくとも、愛多間七をプリオタにした後からの参戦です。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1028.html
かけがえのないともだち/ドキドキ猫キュア あゆみー そろそろ出発するわよ!! あゆみ「はーい!」 母親に呼ばれ少女は家を出た。振り返り、少女は名残惜しそうにもう一度家を見た。 車に揺られ 窓から今はもう懐かしい風景を見ながら大切なともだちの事を 思い出していました。 最初はこの街が嫌いだった。誰も知り合いが居なくて 独りぼっちで辛かったから。みんないなくなればいいのに・・・・・・本気か冗談かは分からないけど思ってしまった。 そんな時、あなたに出会った。初めは警戒してたけど、でもやっとともだちが出来たって思えて嬉しかった。 アイスを食べたり、ゲームをしたり 散歩をしたり・・・あなたと過ごした日々はとても楽しかった。 あなたは私の為に悪役になった。私はあなたの為にプリキュアになった。 色々大変な事もあったけど プリキュアのみんなや学校のともだち グレルとエンエン たくさんともだちが出来た。 みんなあなたのおかげ。 私が変われたのはふーちゃんが居てくれたからだよ。もう、あなたには会えないけれど この空の上できっとずっと見守ってくれているよね 《ずーっとずっとともだち♪》 あゆみ「!!うん・・・ずーっとずっとともだち(涙目)」 大好きだったともだちの声が聞こえた気がしてあゆみはつぶやきました。 グレル「あゆみ?」 エンエン「どうしたの?」 心配そうに見る二人のともだちをギュッと抱きしめてあゆみは言います。 あゆみ「なんでもない・・・グレルエンエン、私達はずっとずっとともだちだよ」 グレル「あ、当たり前だろ(困惑)」 エンエン「…o(゚◇゚)o…」 突然の言葉に二人は戸惑っていました。 あゆみはまた別の街に引っこしました。しかし、以前のような不安も苦しみも今の彼女にはありません。あゆみは母親と 二人のともだちと・・・ そして青空に向かって行ってきます!と元気に登校して行きました。 かけがえのないともだち おわり
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/910.html
140文字SS:フレッシュプリキュア!【16】 1.ラブせつで『手繰り寄せた糸の先』/ねぎぼう 四つ葉町中を駆け回る。 もう一度その手をとるまでは……。 夕暮れになっても見つからず途方に暮れる。 それでも見えない糸口を手繰り続けた。 ―― 行くあても帰る場所もなく途方に暮れていた。 信じていた光も遠く閉ざされていく様に感じられた。 でも本当の光は…… ――手繰り寄せた糸の先にあった光。 2.ラブせつで『愛してる、って言ったら満足?』/ねぎぼう 「愛してる、って言ったら満足?」 (この世界の人間など……) 「そうだったらあたし本当に嬉しいよ!だってせつなが大好きだもん!」 まさかラブの背中にはまだあの羽根が? 「でも、せつなにもきっと大切な人がいるから……だから、言わなくてもいいよ」 そんな『天使』に目を背けるしかなかった。 3.ラブせつで【いつもとは逆の立場で / 吐息まじりに】/ねぎぼう 「新井白石が行った政治改革は何?」 「え~っと、しょ、しょ、『聖徳太子』!?」 「よく覚えていたね。でも、正解は『正徳の治』だよ」 「あ、そうなのね……」 せつなに勉強を教えるラブ、いつもとは逆の立場の二人だった。 吐息まじりに「はあ……歴史って難しいのね」 (せつなもたまにボケるなあ……) 4.ラブせつで『隣の人』/ねぎぼう 隣の人はその肩にもたれて気持ちよさげに眠っていた。 (起こすのも可哀想だけど、このままじゃ風邪をひくわ) せつなは毛布をかき集めてラブにかけると、頭を膝枕する。 そして自分は壁にもたれ掛かった。 「眠れなかったわね」 でも、この温もりがずっと続いてくれるなら……眠れないことも悪くない。 5.ラブせつで『ご機嫌取りも楽しみのひとつ』/ねぎぼう 「今日もそのペンダントでお出掛けかい?ご機嫌取りも楽しみのひとつのようだね」 「馬鹿なことを。私はメビウス様のお役に立つことを成しとげる。ただそれだけだ」 「ほう。ならそのタートルネックの服はなんだい?」 「こ、これは……作戦のひとつだ」 部屋ではウエスターが鼻血を噴いて倒れていた。 6.ラブせつで『愛に近い執着』/ねぎぼう 「まあいい、これでいつでもあの子に近づける」 「まあいい、次はあの子の変身アイテムを奪ってやる」 「まあいい、次は……」 “イースさん、まさに愛に近い執着ってやつですか?” 「ふん、愛などと虫酸が走る。そもそもこんなものがあるからいけないのだ、こうしてやる!」 「せつな~!」 「ラブぅ」 7.ラブせつで【 特別なフリをして 】 42話のイメージで/ねぎぼう 「ニンジン代わりに食べて、お願い!」 「もう、今日だけよ」 特別なフリをして、私の皿にニンジンのソテーを移させる。 「明日はちゃんと食べなきゃね、ラブ」 「明日もニンジン?」 「いいわね、ラザニアに入れちゃいましょう!」 「お母さん!?」 そうだ、明日から私は…… 「お母さん、肩もませて」 8.ラブせつで『本当、だったり。』/ねぎぼう 「せつなの占い、ぜんぜんデタラメなんかじゃなかったよ」 (占いはデタラメ、だったり……時には本当、だったり。 時々は本当らしいことも混ぜたほうが騙すのに効果があるから) 「占いは当たるかも当たらないも本人しだいよ」 (どんなに騙しても……全部本当のことのなるのだから。羨ましいくらい) 9.ラブせつで『新婚ごっこ』/ねぎぼう 「ただいま!」 「おかえり」 帰ってきて、そこにせつながいるのはとっても幸せ。 でももう少し欲張ってもいいよね? 「『アレ』でお出迎えして欲しいなあ」 「もう、ラブったら」 そう、『新婚ごっこ』でね。 「お風呂にする?ご飯にする?それとも……わ・た・し?」 せつな、顔が紅いよ? 勿論答えは…… 10.ラブせつで『どうせ嘘なんでしょう?』/ねぎぼう 「どうせ嘘なんでしょう? ウエスター。貴方の下手な嘘はもういいわ」 「ウエスターの言っているのは……嘘じゃないんだ、イース」 「サウラーまで!?」 「キュアピーチが……解放記念公園で踊っているんだ、今!」 せつなが窓から公園の方向に目をこらすと、観衆の取り囲む中央に確かにいた。 「ラブ!」 ※崩壊したメビウスタワーの跡地が公園になっていそう、ということで。
https://w.atwiki.jp/ivdd/pages/298.html
あゆみ 出演 生年月日 1986/5/4 所属事務所 ヒラタオフィス ステータス 活動中 画像・動画検索 Google/Yahoo!/Bing/NAVER/Baidu/YouTube あゆみ「BIG LOVE」 監督 大沼智哉 メーカー スパイスビジュアル 発売日 2010/6/25 通販 Amazon.co.jp DMM あゆみ「Eternal Summer」 監督 中村直彦 メーカー ラインコミュニケーションズ 発売日 2009/5/20 通販 Amazon.co.jp DMM あゆみ「Summer Jewel」 監督 中村直彦 メーカー 彩文館出版 発売日 2008/10/22 通販 Amazon.co.jp DMM あゆみ「はじめまして『あゆみ』です」 監督 塩澤浩二 メーカー リバプール 発売日 2006/5/26 通販 Amazon.co.jp DMM
https://w.atwiki.jp/gununu/pages/661.html
フレッシュプリキュア! 作品情報 公式HP http //asahi.co.jp/fresh_precure/ http //www.toei-anim.co.jp/tv/fresh_precure/ 18枚 桃園ラブ キュアピーチ 蒼乃美希 キュアベリー 山吹祈里 キュアパイン 東せつな キュアパッション イース シフォン タルト カオルちゃん 西隼人 ウエスター 南瞬 サウラー 北那由他 ノーザ
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/1082.html
「あれ?タルト。どうしてそんなところにいるの?」 庭の隅で少年にもらったパンを食べていたタルトは、その聞き慣れた声に、ぱっと顔を上げた。生垣の向こうに、こちらを覗き込んでいる少女の姿が見える。 日はもうとっぷりと暮れている。だから服装まではよくわからないが、彼女の髪は、門灯の光で銀色に輝いている。そのことに少し胸を痛めながらも、その声の様子が朝と同じく穏やかなのに気付いて、タルトは密かに安堵のため息を付いた。 「パッションはん!無事で良かったなぁ。サウラーと戦ってる間、気になって物陰から見とったんや。」 「そうだったの。心配かけてごめんなさい。あのあと偶然、桃園家にお世話になることになって・・・この時代でも。」 タルトは門の隙間からちょろりと外に出ると、少し伏し目がちなせつなの顔を覗き込み、目を細くしてニコリと笑った。 「知っとるで。実は家まで付いて行ったんや。あ、でも、さすがにあゆみはんに見られたらあかんやろか、と思って、中には入らんかったけどな。なんや、中学生のあゆみはんって、エラいキュートやなぁ!わっ、別に、普段がキュートやないって言うとるわけやないで。」 タルトのいつも通りの語り口に、せつなも少し、頬を緩める。 源吉の畳が自分たちのせいで被害を受けたと知り、手伝いを申し出たせつなだったが、今日はもう遅いから、という理由で、作業場に入るのは明日ということになった。そこでせつなは、夕食の後、急いでタルトの様子を見にやって来たのだった。 「ところで、どうして庭なんかにいるの?あの子は?」 そう言って小首をかしげるせつなに、タルトは少し心配そうな顔で、屋敷の方を振り返った。 「それなんやけどな。あの子のお父さんっちゅう人が、さっき戻って来たんや。こーんなでっかい車に送られてなぁ。それでわいも遠慮して出て来たんやけど・・・なんやあの子の方は、微妙な雰囲気やったで。お父さんがやっと帰って来たっちゅうのに、嬉しそうな顔ひとつせぇへんのや。」 せつなは、父の話をしたときの、何だか妙に寂しげだった少年の様子を思い出し、眉根を寄せた。 桃源まで、東へ五分 ( 第3章:一生懸命ということ ) 「そうかぁ。マシンの部品が、何かなくなっとるんか・・・。」 頼りなげな街灯のともる公園のベンチで、タルトがぼそりとつぶやく。 「まぁ、まだマシンがこの時代にあるっちゅうのは、ありがたいことやけどなあ。ナケワメーケを倒したときに、どこか壊れたんやろか。」 「それはないわ。現にこの時代までちゃんと来てるんだし。壊れたとしたら、この時代へ来てからね。おそらく、トラックの上に落っこちたとき。」 「やっぱりあんときかい・・・だとしたら、あの現場の近くにあると考えるんが普通やな。探しに行こか、パッションはん。」 タルトの言葉が、勢いを取り戻す。が、せつなはうつむいて、膝の上に重ねた自分の手をじっと見つめた。 「私・・・明日は源吉おじいさまのお手伝いをしたいの。私たちがこの時代に現れて、トラックの積み荷を滅茶苦茶にしちゃったでしょ?あれは、源吉おじいさまの畳だったのよ。」 「何やて?」 驚くタルトに、せつなは今日あゆみに聞いた一部始終を説明する。 「そうかぁ。そういうことなら、パッションはんはそっちを手伝ってや。探し物は、わい一人で何とかやってみるわ。」 「大丈夫?タルト。」 「任せときい!わいも、あんさんは源吉はんの手伝いをした方が、ええと思うわ。ひょっとしたら・・・」 「ひょっとしたら・・・なに?」 せつなが不思議そうに尋ねると、タルトはハッとしたように口をつぐんで、慌ててかぶりを振った。 「な、何でもないんや。とにかく、明日はそれぞれのやるべきことを、精一杯がんばるで!」 「タルトったら。どうしてそこで、私の台詞を取っちゃうわけ?」 クスリと笑ったせつなに、自分もにんまりと笑みを返しながら、タルトは心の中で呟く。 (ひょっとしたら、わいらがこの時代の歴史と関わってしまったことって、そのことなのかもしれへん。パッションはん、頼んだで。あんさんのその“精一杯”で、歴史の歪みを、元に戻してや。) 「よぉし、明日は張り切って、宝探しやぁ!」 タルトが思い切り拳を振り上げた時。暗がりから何かが近づいてくる気配を感じて、せつなが身構える。と、そこへ・・・。 「タルト、こんなところに居たのかぁ。宝探しって、何?」 ひょっこりと現れた少年の思わぬ言葉に、せつなは目を白黒させた。 (えーっと・・・これは、どういう未来の技術ってことにすればいいのかしら。) 必死で言い訳を考えるせつなに、 「おねえちゃん、お帰り。何かヒントになるもの、見つかった?マシンを暴走させた危ないヤツ、まだこの時代に居たの?」 少年が相変わらず、無邪気に質問を浴びせる。 「ちょ、ちょっとごめん!」 せつなは少年の言葉を遮ると、タルトの襟首を掴んで、脱兎のごとく少年のそばから離れた。 「タルト!一体どういうことよ。」 「す、すんまへん。わい、あの子の前でうっかりしゃべってしもたんや。家の中で、しばらく二人きりでテレビ見とったら、急に当たり前みたいな顔で話しかけてこられて・・・つい油断してな~。」 「全くもう・・・」 深いため息をつくせつなに、タルトも肩をすぼめる。 「せやけど、あの子あんまり驚かへんかったで。へぇ、やっぱりしゃべれるんだ、って喜んどったわ。」 「今朝、声が聞こえたとか言っていたから、ひょっとしたらと思っていたのかもね。まさか、正体まで明かしてないでしょうね。」 「そんなことしてへん!まぁ・・・イタチやないとは言うたけどな。この時代では、フェレットっちゅう動物は、あんまりメジャーやないんやな。」 「そこはどうでもいいんだけど・・・あの子にちゃんと口止めはしたの?」 「もちろんや。」 うなだれるタルトを前に、せつなはもう一度ため息をつくと、厳しい目でタルトの顔を覗き込んだ。 「いい?しゃべってしまったものは仕方ないけど、くれぐれも、あの子に余計なこと言わないで。私たちの時代のことを教えるなんて、論外よ。」 「わかっとるがな。」 「それから、私たちのこともむやみにしゃべらないで。私たちは、いずれは未来へ帰っていく通りすがり。それだけの存在でいなくちゃ。」 「う・・・自分の名前だけは、言ってもうたわ。」 「そう言えばさっき、呼ばれてたわね。全く・・・」 「えろうすんまへん。」 ひたすら小さく身を縮めるタルトの様子に、せつなはやれやれ、といった調子で、やっと少し表情を緩めた。 元居たベンチのところへ戻ってみると、少年はベンチに座って、長く伸びる街灯の影を、じっと見つめていた。そして二人がやって来たのに気付くと、ぽんとベンチから立ち上がり、せつなに向かってニヤッと笑って見せた。 「ごめんなさいね。タルトがあなたにしゃべったって聞いたから、びっくりしちゃって。」 「ああ、心配しないで。俺、タルトのこと誰かにしゃべったりしないからさ。それより、宝探しって何?」 せつなは少し考えてから、タイムマシンの部品が何か無くなっているらしいこと、この時代に最初に現れた橋の上を探してみようかと考えていたことを、かいつまんで話した。 「その部品って、どんな部品なの?」 「わからないわ。私はマシンの構造には詳しくないから。とにかく探してみるしかないと思う。」 「もしも見つかったら、どうするの?今マシンを持っているのは、その危ないヤツなんだろ?」 「まずは見つけることができたらの話だから、それから作戦を練るしかないわね。」 サウラーとの交渉――確かに一筋縄ではいかないだろうが、まずは一歩一歩足場を固めるしかないだろうと、せつなは思っていた。 それに、ただ元の時代に戻るだけでは駄目なのだ。もうひとつ、未来を元に戻すという、大きな仕事を成し遂げなければ。それこそ何の手掛かりもない、雲を掴むような話だが、こちらもとにかく、今出来ることをやるしかない。 「ふぅん・・・。」 そう言ったまま、なんとなく押し黙ってしまった少年の様子に、せつなは少し違和感を覚える。が、さっきのタルトの言葉を思い出して、ああ、と密かに頷いた。 「そう言えば、タルトに聞いたけど、お父さん帰って来たんだって?早く家に戻らなくていいの?」 せつなが優しい口調でそう問いかけると、 「別に・・・。俺が居ても居なくても、父さんは気にしやしないよ。」 少年のそっけない答えが返って来た。 「そんなこと無い。子供を気にしない親なんて、この世界には居ないと思うわ。」 思わず身を乗り出したせつなに、少年は今朝初めて会ったときの、ちょっと背伸びしたような表情を見せた。 「大丈夫だよ。俺だって小さなガキじゃないんだ。父さんには心配かけないように、うまくやってるからさ。」 さてこの話はもうおしまい、と言いたげな少年の様子に、せつなは密かに唇を噛む。 (そういうことじゃないんだけど・・・。) 何だろう。伝えたいことは確かにあるのに、うまく伝えられない。少年の心が、自分の心のすぐ近くにある気がするのに、すんなりと寄り添えない・・・。 せつなは、再びタルトを預かって家に帰っていく少年の後ろ姿を、もどかしい気持ちで見つめることしか出来なかった。 表に傷の付いた畳を作業台の上に据え付け、縁を留め付けた糸を手早く切っていく。縁を外し、畳表を丁寧に剥がすと、傷の無い床の部分を源吉の作業台のそばに立てかける。 迷いの無いその手元を、源吉はさっきから鋭い目で見つめていた。 (不思議な子だ・・・。) 最初は、畳を見るのすら初めてなのかと思えるほど、おっかなびっくり畳に触っていた彼女。だが、ひとたび作業の手順を教えると、その手つきは見る見るうちに確かなものへと変わっていった。 源吉は、これまで弟子を取ったことはない。仕事の仕方を人に教えたこともないし、自分だって、懇切丁寧に説明されて仕事を覚えたわけではない。 習うより慣れろ。技は見て盗め――徒弟制度の昔ながらの厳しい修行のやり方。それを知っているかのように、少女は真剣な面持ちで源吉の言葉足らずな説明を聞き、その指先を見つめて、いとも簡単にコツを掴んでしまう。 (記憶がねえと聞いているが・・・。) 一体今まで、どんな人生を歩んで来た子なのだろうと、源吉は内心舌を巻いていた。 せつなは、ただ無心で畳と向き合っていた。 まっすぐ丁寧に縫い込まれた糸にスッと刃を当て、縁と畳表を取り外す。職人の手で心を込めて作られた畳が、傷付けられた箇所を取り払われ、再び命が吹き込まれるのを待つ。 源吉は、せつなに言葉少なく指示を与えるだけで、ほとんど口をきかず、ただ黙々と手を動かしている。 夏だというのに、ひんやりと涼しい板の間。鼻をくすぐる爽やかないぐさの匂い。作業の物音しか聞こえない、しんと静まり返った空間――。 無駄口を叩かず、無駄な動きをせず、作業を効率的に進めていく様は、ラビリンスで何度も見たことがある。いや、ラビリンスの職場という職場が、そのような様相を呈していると言っても、過言ではない。 しかし、同じ静かな職場でも、この場の持つ雰囲気は、そんな無味乾燥なものとは正反対と言っていい。 作業場の至るところに、材料や道具の全てに、そして扱われている畳の全てに、源吉のあたたかな目配りが感じられる。源吉が作業場の全てのものを慈しみ、大切にしている様子が伝わってくる。 ここは単なる作業場ではなく、源吉にとっては聖域。自分のありったけの技と心を、畳に送り込む場所なのだ。それを肌で感じながら、そんな場所でお手伝いをさせてもらっていることを、せつなは心からありがたく、恐れ多いとさえ思った。 朝から懸命に作業を進めて来た甲斐があってか、あんなに山積みにされていた畳の解体作業も、夕方には全て完了した。あと残っているのは畳表や縁を縫いつける作業なので、さすがにそれは、せつなには手伝えない。 「いやぁ、お前さんに手伝ってもらって、本当に助かった。先方の希望には到底間に合わねえと諦めていたんだけどよ。お陰で何とかなりそうだ。ありがとうな。もうここはいいから、ゆっくりしてくれ。」 源吉は畳を縫う手を休めずにそう言うと、せつなに穏やかに笑いかけた。 「・・・もう少しだけ、ここに居てはいけませんか?」 せつなが遠慮がちに問いかける。 「そりゃ構わねえが・・・もう手伝ってもらうことは、特にねえぞ。」 「もし良かったら、ここでおじい・・・おじさまのお仕事を、少し見ていたいんですけど。」 「ああ、そりゃあもちろん構わねえよ。」 せつなは源吉の作業台の向こう側に、膝を抱えて座り込む。そして、源吉が畳を縫い上げていく力強い手さばきを、一心に見つめ始めた。 実はそれから十年と少し先。源吉の孫娘に生まれた幼いラブが、今のせつなと同じ場所に同じ格好で座り込み、目をキラキラさせながら源吉の仕事ぶりを眺めることになるのだが・・・せつなも源吉も、今はもちろん、そんなことは知らない。 「なんだかねぇ・・・。」 あゆみはテーブルに頬杖をついて、ぼんやりと宙を眺めていた。 目の前には数学の問題集。夏休みの宿題だ。しかし、開かれたページは真っ白で、さっきからちっともはかどっていない。 「あゆみ。今度は何?」 向かいの席に座って問題を解いていた尚子が、そのつぶやきを聞いて、顔を上げた。 「おじさんの畳は、何とか目処がつきそうなんでしょ?昨日のあの子がおじさんのお手伝いをしてくれてるって・・・」 「うん。とっても器用みたいで、お父さんも助かってるって。」 そう言ってまた、はぁっとため息。 あゆみの隣りで、問題集ならず爪を整えるのに夢中になっていたレミは、ひょいと首をすくめて、尚子と目を合わせた。 ここはレミの家のダイニング。このところ、三人は毎日のようにレミの家に集まっては、一緒に宿題をしたり、連れ立って遊びに出かけたりしていた。 これだけいつも一緒にいるのだ。ただでさえわかりやすいあゆみの気持ちは、レミと尚子の二人には、なんとなくわかる。 (ひょっとして今度は・・・あの「Kちゃん」のこと?) 「Kちゃん」とは、昨日あゆみたち三人を助けてくれた少女のことを指す、三人の間だけの呼び名だった。彼女が落としていった野球帽の内側に、マジックで「K.T」とイニシャルが書いてあるのをレミが見つけて、誰ともなしにそう呼び始めたのだ。帽子の方はあゆみが預かっていて、後で本人に渡そうと思っていた。 「もしかして、Kちゃんのことが気になるの?」 尚子の問いに、あゆみは素直に頷いた。 「うん。やっぱり彼女、なんだか寂しそうなのよね。」 「まあ、記憶が無いって言うんじゃあ、色々と不安に思うのも無理ないわよぉ。」 レミはそう言ってから、心なしか声のトーンを落としてこう続ける。 「ねえ、Kちゃんの髪・・・あれってやっぱり、何か相当苦労したとか、恐い目に遭ってああなったのかしら。ほら、よく聞くじゃない?とっても恐ろしい思いをした人が、一晩で白髪になっちゃうことがあるって話。」 「でも、あの髪はどう見たって白髪じゃなくて、銀色よ。レミちゃんの蒼い髪と一緒で、生まれつきなんじゃないの?」 あゆみが口を尖らせる。 「生まれつきって・・・あんな髪の色、見たことある?」 「確かに珍しいけど、居ないわけじゃないんじゃないの?現に、Kちゃんがそうなんだから。」 尚子が問題を解く手を休めもせずに、あっさりと言い放つ。 「尚子、それって理論的なようで、理論的で無いような・・・」 「レミに言われたくないわよ。」 何がそんなに問題なの?と言いたげな尚子の口調に、レミもしぶしぶといった調子で押し黙った。 「それより、あゆみ。寂しそうだと思うんなら、話をするなり、遊びに連れ出すなりすればいいじゃない。」 一段落ついたのか、尚子がカタンとシャーペンを置いて、うーん、と伸びをしてから言った。 「そうなんだけど・・・。なんか、深入りして欲しくないっていうか、出来れば放っておいて欲しいっていうか、そんな雰囲気を感じるのよね。」 「クスッ。フフッ、ハハハ・・・。」 「・・・尚ちゃん?何がおかしいの?」 突然笑い出した尚子に、あゆみが怪訝そうな、少し不機嫌そうな声で問いかける。尚子は微笑を浮かべたまま、いたずらっぽい目つきで、そんなあゆみを見返した。 「だって、あんまりあゆみらしくないこと言うんだもの。あの頃私に、あんなに親身におせっかいを焼いてくれた、あなたとはとても思えない。」 言われてあゆみは思い出す。あれは、中学一年生の三学期。四つ葉中学校に転校してきた尚子が、一月も経たないうちに、クラスから少々浮いた存在になってしまった頃のことを。 見た目の女の子らしい可愛らしさとは裏腹に、理路整然とした理屈を、ストレートに口にする論客。そのギャップがいけなかったのか、まだ親しい友人も出来ないうちに、級友たちの大半が、彼女を遠巻きにするようになっていった。 尚子自身、そういった状況を、あまり悲観的には受け止めていなかった。元々彼女の家は転勤家族で、尚子も小学校を四回替わっている。だから、学校ではやりたいことをやり、言いたいことを言い、またすぐ別れてしまう級友たちには何の期待もしない・・・そんな処世術を、彼女はいつの間にか身につけてしまったのだ。 別にいじめられるわけではない。誰も話しかけてこなくても、休み時間には教室で本を読んでいればいい――そう思っていた尚子だったが、あゆみだけは、他の級友たちとは違った。 いくらつっけんどんな言葉を浴びせても、そっけない態度を取っても、休み時間の度に、ニコニコと話しかけてくる。一緒にお昼を食べようと誘いに来る。彼女につられて、幼なじみだというレミまでも、尚子の元に頻繁にやってくるようになった。 そして決定的だったのが、ある雨の日の放課後。学校帰りの空き地で怪我をしている子猫を見つけ、どうしたらいいかとうろたえていた尚子と一緒に、あゆみは寒空の下、動物病院を探して駆け回ってくれた。結局、商店街から少し奥まったところにある山吹動物病院を見つけて、子猫は一命をとりとめた。 その日から、あゆみと尚子は、本当の意味での友達になった。今ではレミも含めた三人がいつも一緒にいるのは、級友たちにとっても、ごく当たり前の光景だ。 「私ね、あゆみ。」 真面目な表情に戻った尚子は、じっとあゆみの目を見つめて言った。 「あの頃、あゆみやレミが話しかけてくれても、無愛想な返事しかできなかったけど、本当は凄く嬉しかったのよ。放っておいてなんて口では言っても、独りっていうのは、やっぱり寂しいから・・・。何か事情があるのかもしれないけど、あの子も本当は、独りでいたくはないんじゃないかな。」 尚子の目を見つめ返すあゆみの顔に、ゆっくりと笑みが浮かぶ。 「あ~あ、珍しく尚子が素直だから、喉渇いちゃったぁ。二人とも、麦茶飲むわよね?」 レミがガタンと乱暴に椅子を引いて立ち上がり、二人から顔をそむけて、冷蔵庫へ向かう。きっと、その目にうっすらと光る涙を隠しているんだろうなと、あゆみは尚子と顔を見合わせて、クスクスと笑った。 「よぉし、今日の分はこれで終いだ。」 源吉が、出来たばかりの畳の縁を、そっと手でしごく。源吉の手元をずっと見つめ続けていたせつなは、その声にほぉっと息を吐き出して、肩の力を抜いた。 「ずいぶん熱心に見ていたな。畳作りは、面白いかい?」 「ええ。本当に一針一針、大事に作られているんですね。」 せつなに素直に頷かれて、源吉はとても嬉しそうに相好を崩した。 「そうとも。一針一針、ちゃあんと愛情を込めて一生懸命作りゃあ、使ってくれる人にも、想いが伝わるってもんだ。それに、お天道様にもな。」 「お天道様?」 不思議そうな顔をするせつなに、源吉は静かに頷く。 「何事もな。目立たなくったって、上手くいかなくったって、諦めずに頑張ってさえいりゃあ、お天道様は必ず見ていて下さる。今度のことだって、俺はもう駄目かと諦めかけたけどよ。そんなときに、お前さんという強力な助っ人が現れた。やっぱり、俺が毎日真心込めて畳を作っているのを、お天道様はちゃあんと見ていて下さったんだなぁと、そう思った。」 「い、いや、私は別に、お天道様とは何の関係も・・・」 「はぁっはっはっ!」 源吉は豪快な笑い声を上げると、うろたえて赤くなったせつなの顔を、優しく覗き込んだ。 「人と人との巡り合わせってことを言ってるのさ。俺にとっちゃあ、お前さんとの出会いは、まさに天の助けだったんだ。今までコツコツ頑張って来たご褒美に、お天道様が助けて下さったんだって、俺は思ってる。」 「私が・・・おじさまにとって?でも、私は・・・」 眉を曇らせてうつむいたせつなは、しばらく逡巡した後、意を決したように口を開いた。 「私はきっと、そんな褒められるような人間じゃないんです。お天道様に罰を当てられても仕方の無いような・・・。だから、私との出会いなんて・・・」 「本当に悪い人間はな。そんな風に、悩んだり苦しんだりしねえよ。」 低く深みのある声が、頭の上からやわらかく降ってきて、せつなは思わず顔を上げた。源吉の、あゆみに似た優しい鳶色の瞳が、目の前にあった。 「悩んで、苦しんで、それでも前へ進もうとあがくのが、真っ当に生きてくってことだ。そんな人間に、お天道様は罰なんか当てたりしねえ。むしろ、みんなが顔を上げて歩けるように、あったけえ光で照らして下さる。そのお陰で、俺たちは気が付きゃほんの少し、前へ進めてるんだ。だから、そんな風に思わなくていい。俺にとっちゃお前さんは、紛れもねえ、天の助けさ。」 「・・・・・・。」 嬉しさなのか、哀しさなのか、恥ずかしさなのか・・・自分でもよくわからない熱い塊が胸にこみ上げて、せつなは耳まで真っ赤になってうつむいた。源吉は、そんなせつなの様子を愛おしそうに見つめると、ぽんぽんと二回その頭を軽く叩いて、よっこらしょ、と立ち上がった。 「夕飯まで、まだ間があるだろう。後は片付けだけだから、家に戻ってな。」 「片付けなら、私も一緒に・・・」 そう言いかけたとき。作業場の引き戸の隙間から、そっと手招きしている小さな動物のような手が、せつなの目に飛び込んできた。 「パッションはん。大変やぁ!」 せつなが作業場から出てくるのを待ち構えて、タルトが慌てふためいた様子で駆け寄って来た。 「落ち着いて、タルト。ここじゃまずいわ。こっちに来て。」 人目につかない家の裏手にまわって、何があったのか、せつなは改めてタルトに説明を求める。 「今日は一日、あの橋の上やら周りやらで、マシンの部品を探しとったんや。そしたらさっき、サウラーが現れてな。」 「サウラーが!?タルト、見つかったの?」 「いや。わいはそのとき河原におったんで、向こうは気付かへんかったはずや。そのまま隠れてやり過ごそうって思ってたら、あの男の子がやって来たんや。 あの子はサウラーにすたすた近付いていって、何やら二人で話しとった。そのとき・・・あの子がなんか、小さな光るものを手に持っとったんや。」 「それって・・・まさか!」 驚きに目を見開くせつなに、タルトは力強く頷いて、はっきりとした口調で言った。 「タイムマシンの・・・部品やと思うわ。」 昨夜の公園で、少年に感じた違和感を、せつなは鮮明に思い出していた。あのとき、彼はもうマシンの部品を手に入れていたのかもしれない。もしかしたら、昨日の朝初めて会ったときには、そうとは知らず、あの河原で部品を拾った後だったのかもしれない。 (それを・・・私たちに黙っていたということは・・・) 「タルト!二人はその後、どうしたの!?」 「・・・街外れの、森の方へ歩いて行ったわ。」 聞くが早いか、せつなは全速力で走り出した。 「あら?あれ、Kちゃんじゃないのぉ?」 レミの家の前で帰宅の途につこうとしていたあゆみは、レミにそう言われて、慌てて後ろを振り返った。 道路の向こう側を、飛ぶように駆けていく少女が見える。 軽やかな足の運び。力強い意志を感じさせる、煌めくような瞳。夕陽を浴びて、銀色というよりはむしろ、金色に輝く髪・・・。 しなやかな獣のような美しいその姿にしばし見とれていたあゆみは、ハッとしたように、その後を追って走り出した。 「ちょっと、あゆみ!どこに行くのよ。」 尚子が慌ててその後を追う。 「えーっ!?ちょっとあなたたち。追いつこうなんて無理だってばぁ!」 レミの悲鳴を聞きながら、あゆみは次第に遠ざかっていく少女の背中を、懸命に追いかけていた。 せつなは、焦る気持ちを必死に押さえながら、日の暮れかかった商店街をひた走っていた。足元には、タルトがしっかり、彼女のペースに付いてきている。 何かとてつもなく、嫌な予感がする。少年の大人びて見える寂しげな瞳と、サウラーの氷のような瞳が、頭の中でぐるぐると回っている。 (間に合って・・・。今度こそ、あなたに伝えたいことを、精一杯伝えてみせるから!) 目指すは街外れに広がる森――この時代から二十五年後に、占い館と呼ばれる古い洋館が出現する、昼なお暗い、森の中だった。 ~第3章・終~ 新-859へ
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/32116.html
デリシャスパーティ・プリキュア オフィシャルコンプリートブック デリシャスパーティ♡プリキュア設定資料集 決定版 発売日:4月24日・12月1日 『デリシャスパーティ・プリキュア』の1年間の放送をまとめた決定版! 各種設定画や番組告知ビジュアルなどのイラストを満載でお届け。 スタッフ キャストのインタビューもボリューム満点でお届け。 表紙イラストは新規描き下ろし。ファン必携の1冊です。 ここを編集 2022年2月放送開始。トロピカル~ジュ!プリキュアに続くシリーズ第19作。第20作にひろがるスカイ!プリキュアが、劇場版に映画 デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!がある。 https //www.toei-anim.co.jp/tv/precure/ シリーズディレクター 深澤敏則 原作 東堂いづみ シリーズ構成 平林佐和子 キャラクターデザイン 油布京子 ウバウゾーデザイナー 春山和則 動画検査 梶岡知央、稲橋誠二、須崎かおる、張逸暉 美術デザイン 増田竜太郎 チーフ美術 いいだりえ 色彩設計 清田直美 撮影監督 赤澤賢二 リアルタイムエンジニア 田村正平 デジタル特殊効果 勝岡稔夫 2Dワークス 松田陵平 撮影協力 和田尚之 編集 麻生芳弘 音響効果 石野貴久 録音 林奈緒美 録音助手 月岡陽菜 選曲 水野さやか 記録 浅田奈緒子 音楽 寺田志保 プロデューサー 安見香 シリーズディレクター補佐 村上貴之 アニメーション制作 東映アニメーション 脚本 平林佐和子 金子香緒里 山岡潤平 永井千晶 伊藤睦美 谷畑ユキ 演出 深澤敏則 南川達馬 武藤公春 小松由依 岩井隆央 ひろしまひでき 土田豊 篠原花奈 佐藤道拓 河原龍太 飛田剛 志水淳児 山本隆太 佐々木憲世 八沖繁 横内一樹 三家本泰美 門由利子 絵コンテ 貝澤幸男 カトキハジメ 小村敏明 渋江康士 村上貴之 小川孝治 石黒達也 佐藤照雄 佐藤道拓 古田丈司 南川達馬 西村聡 志水淳児 佐々木憲世 深澤敏則 河原龍太 西田章二 鈴木正男 寺岡巌 門由利子 手塚江美 作画監督 稲上晃 赤田信人 美馬健二 荏原裕子 藤原未来夫 フランシス・カネダ ジョーイ・カランギアン 沼田広 青山充 上野ケン 原憲一 Noh Gil-bo 廣中美佳 板岡錦 上田由希子 村山里野 竹森由加 川口弘明 高橋直樹 松本勝次 陈潔琼 袁東 北島勇樹 長濱睦輝 古徳真美 寿夢龍 レジー・マナバット 邱錦 陳如水 張福民 趙親雲 陳強 松浦仁美 油布京子 北田美弥子 ■関連タイトル Blu-ray デリシャスパーティ・プリキュア vol.1 デリシャスパーティ♡プリキュア設定資料集 決定版 プリキュア20周年アニバーサリー プリキュアコスチュームクロニクル 増補改訂版 上北ふたご プリキュア20周年記念イラスト集 Futago Kamikita×All Precure Blu-ray デリシャスパーティ♡プリキュア感謝祭 デリシャスパーティ・プリキュア オフィシャルコンプリートブック デリシャスパーティプリキュア 主題歌シングル CD+DVD盤 デリシャスパーティプリキュア キラキラトレーディングコレクションガムつき 20個入 デリシャスパーティプリキュア ポーチガム 12個入 デリシャスパーティプリキュア にぎにぎ変身!おしゃべりコメコメ キュアフレンズぬいぐるみ キュアプレシャス プリキュアスタイル キュアプレシャス デリシャスパーティ プリキュア シールあそびえほん だいすきプリキュア! デリシャスパーティプリキュア プリキュアオールスターズ ファンブック vol.1 みんなでかんぱいパーティグラス つくっておせわしてハートキュアウォッチ Pretty Holic プリティアップチーク ラブリーハート Pretty Holic プリティアップリップ キュアサマー&キュアプレシャス スペシャルver. サンスター文具 セイカのパズル45P デリシャスパーティプリキュア ホビー:デリシャスパーティプリキュア rakuten_design= slide ;rakuten_affiliateId= 053df7e0.7c451bd1.0c852203.190c5695 ;rakuten_items= ctsmatch ;rakuten_genreId=0;rakuten_size= 468x160 ;rakuten_target= _blank ;rakuten_theme= gray ;rakuten_border= on ;rakuten_auto_mode= on ;rakuten_genre_title= off ;rakuten_recommend= on ; 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Switch ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom Switch 世界樹の迷宮Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ HD REMASTER Switch ピクミン 4 大友克洋 Animation AKIRA Layouts Key Frames 2 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1 ONE PIECE FILM REDデラックス・リミテッド・エディション 4K ULTRA HD Blu-ray Blu-ray 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ 完全生産限定版 Blu-ray 映画『ゆるキャン△』 Blu-ray 【コレクターズ版】 Blu-ray ウマ娘 プリティーダービー 4th EVENT SPECIAL DREAMERS!! Blu-ray 天地無用!GXP パラダイス始動編 Blu-ray第1巻 特装版 天地無用!魎皇鬼 第伍期 Blu-ray SET 「GS美神」全話いっき見ブルーレイ Blu-ray ソードアート・オンライン -フルダイブ- メーカー特典:「イベントビジュアル使用A3クリアポスター」付 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 5th Live! 虹が咲く場所 Blu-ray Memorial BOX 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Blu-ray BOX 特装限定版 地球へ… Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 神風怪盗ジャンヌ Complete Blu-ray BOX HUNTER×HUNTER ハンター試験編・ゾルディック家編Blu-ray BOX BLEACH Blu-ray Disc BOX 破面篇セレクション1+過去篇 完全生産限定版 MAZINGER THE MOVIE 1973-1976 4Kリマスター版 アニメ・ゲームのロゴデザイン シン・仮面ライダー 音楽集 テレビマガジン特別編集 仮面ライダー 完全版 EPISODE No.1~No.98 MOVIE リスアニ!Vol.50.5 ぼっち・ざ・ろっく!号デラックスエディション ヤマノススメ Next Summit アニメガイド おもいでビヨリ アニメ「魔入りました!入間くん」オフィシャルファンブック 『超時空要塞マクロス』パッケージアート集 CLAMP PREMIUM COLLECTION X 1 トーマの心臓 プレミアムエディション パズル ドラゴンズ 10th Anniversary Art Works はんざわかおり こみっくがーるず画集 ~あばばーさりー!~ あすぱら画集 すいみゃ Art Works trim polka-トリムポルカ- つぐもも裏 超!限界突破イラスト&激!すじ供養漫画集 開田裕治ウルトラマンシリーズ画集 井澤詩織1st写真集 mascotte 鬼頭明里写真集 my pace 内田真礼 1st photobook 「まあやドキ」 進藤あまね1st写真集 翠~Midori~ 声優 宮村優子 対談集 アスカライソジ 三石琴乃 ことのは 亀田祥倫アートワークス 100% 庵野秀明責任編集 仮面ライダー 資料写真集 1971-1973 金子雄司アニメーション背景美術画集 タローマン・クロニクル ラブライブ!サンシャイン!! Find Our 沼津~Aqoursのいる風景~ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会[復刻版] 梅津泰臣 KISS AND CRY 資料集 安彦良和 マイ・バック・ページズ 『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』編 氷川竜介 日本アニメの革新 歴史の転換点となった変化の構造分析 Blu-ray THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th Anniversary Celebration Animation ETERNITY MEMORIES Blu-ray おいら宇宙の探鉱夫 ブルーレイ版 Blu-ray 映画 バクテン!! 完全生産限定版 アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~ Blu-ray BOX 初回生産限定版 はたらく細胞 Blu-ray Disc BOX 完全生産限定版 Blu-ray 長靴をはいた猫 3作品収録 Blu-ray わんぱく王子の大蛇退治 Blu-ray 魔道祖師 完結編 完全生産限定版 魔道祖師Q Blu-ray Disc BOX 完全生産限定盤 にじよん あにめーしょん Blu-ray BOX 【特装限定版】 Blu-ray 鋼の錬金術師 完結編 プレミアム・エディション Blu-ray付き やはりゲームでも俺の青春ラブコメはまちがっている。完 限定版【同梱物】オリジナルアニメ Blu-ray「だから、思春期は終わらずに、青春は続いていく。」
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/1711.html
『映画ヒーリングっど♥プリキュア Connected World』 <前編>4 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「ケガはない?」 妖精の前にしゃがみ込んだキュアグレースが穏やかな声音で尋ねる。 ぼんやりと頷いた妖精が、振り返って女性のほうを見た。 キュアフォンテーヌに立ち上がらせてもらっている女性へキュアグレースが目をやり、 「うん、あの人はだいじょうぶ。ケガしてないよ」 と、妖精に教えてあげる。 それを聞いた妖精の両目がみるみる潤む。女性の無事に心からホッとしているのだ。 キュアグレースが微笑みを浮かべた。 初めて会ったばかりなのに、この妖精のことが少し理解できた気がした。 「わたしはキュアグレース。……あなたは?」 問われて妖精が戸惑いの表情を見せた。 自分には ―― 名前がない。 昔、『お繋ぎ様』と呼ばれたことがあったが、あれが名前なのかどうかは、いまだに分からずじまいである。どう応えようか迷っているうちに思考が横道にそれる。 ―― そもそも『お繋ぎ様』ってどういう意味なんだろう? ―― 何かを繋ぐのかな? 「……つなぐ……」 とりとめのない思考の一部が、つい言葉となって口からこぼれてしまった。 キュアグレースが勘違いしてうなずく。 「ツナグ。……いい名前だね」 ハッとしてキュアグレースの顔を見直すが、自分とまっすぐ目を合わせてニッコリと花のように笑ってくれる彼女を前に、違うとは言い出せなかった。 それに、今 ―― いい名前だと言ってくれた。 「……うん、ボクの名前は、ツナグ」 ふふっ、と笑いながら、キュアグレースが手を伸ばしてきた。 妖精 ―― ツナグがきょとんとしていると、頭を優しく撫でられた。全然嫌ではなかったけれど、こういう事をされるのは初めてなので、動転して「わっ…!」と声をあげてしまった。 その時、キュアグレースの足元を『サァァッ…』と、どこからか吹く風が撫でた。 キュアアースの足元に、ちょこん、と行儀よく座っていたラテが何かを感じて、キュアグレースのほうへ走り寄っていくが、それよりも早く、 (あれ…っ?) 不意に体が揺れて、後ろにペタンと尻もちを着いてしまう。身にまとっていたプリキュアのチカラが発光と共に散り、キュアグレースから花寺のどかの姿へと戻る。 同時に、ヒーリングステッキと一体化していたラビリンも合体を解除され、二頭身体型のピンク色の子ウサギの姿に戻る。 「ど、どうしたラビ、のどかっ」 「わからないけど……急に変身が……」 「ワンっ、ワンっ」 可愛らしい吠え声で、ラテが警鐘を鳴らした。 あっ、とのどかの表情が固まった。 彼女だけではなく、残り三人のプリキュアの表情も ―― 。 女性が、眼鏡のレンズに陽光を反射させて笑っていた。 「くくく……、怪物と戦う変身少女の正体。これ、超が付くほどの特ダネやん」 「ま、待ってください!」 表情を固くして一歩前に出るキュアフォンテーヌ。彼女を見て、女性が遅まきながら気付いたように言った。 「フッ、そう言えば自己紹介がまだやったね」 唐突に女性がポーズを決めて叫び始めた。 「父はニューヨーカー! 母は大和撫子! 産湯はミュンヘン! 育ちは大阪! 地球が私の最前線! グローバル・フリージャーナリスト! 増子ミナ! 続けて読めば~……マスコミな!! ……フッ、今日もこの私、ミナが皆(みな)の“知りたい”に応えます」 途端、「ブフフーーーッッ!!」とキュアフォンテーヌが盛大に噴いて地面にぶっ倒れた。 もとよりダジャレに対する耐性がほぼゼロの彼女だ。普通の人なら「くだらない」の一言で済ますようなものでも、彼女を笑い転がすには充分である。 しかも今回は『増子ミナ』と『マスコミな』に加えて、『ミナ』と『皆』の二連撃。 緊張していたところへ不意打ちで食らってしまったせいか、現在、笑いを通り越して全身痙攣に至っている。 …………ダメージが大きすぎた。変身が解ける。 キュアスパークルが血相を変えて叫んだ。 「ち、ちゆちー! だいじょうぶっ!?」 とっさに普段使っている愛称で呼びかけたが、沢泉ちゆからの返事はなかった。ミナの自己紹介が完全にツボに入ってしまったようで激しく悶絶中。起き上がる気配さえなかった。 「どどど……どうしよう、ねえ、ニャトラン」 「俺に聞かれてもなぁ。ホントどうすんだよ、これ」 オロオロしているキュアスパークルの傍らをスッ…と通って、キュアアースが前に出た。そして、ミナと正面から向かい合う。 ―― 彼女の雰囲気は、メガビョーゲンと闘っていた時と同種。 キュアスパークルとニャトランがハッとして声をかけた。 「絶対ダメだよ、アース! 実力行使とかっ!」 「さすがにマズイって! 人間相手に!」 「……いいえ。残念ですが、これしか手段はありません」 キュアスパークルたちの制止の声を振り切って、キュアアースの左右の繊手が疾風よりも速くミナの顔へと伸びた。通常の人間の動体視力では捉えきれないスピードだった。事実、ミナ自身、自分が何をされたのか分かっていない。 「さあ、今のうちです、スパークル! のどかたちを連れて立ち去りましょう!」 「いや今のうちって……」 まじまじとキュアスパークルがミナを見る。 驚異的な速度で眼鏡を頭の上にずり上げられた彼女は、まるで視力を喪失したかのように、両手を前に出して「メガネ…メガネ…」と手探りで眼鏡を探し求めている。 ……………………。 キュアスパークルがキュアアースのほうを向いて言った。 「ねえ、アース。これ絶対見えてるよ」 「そうでしょうか? とても演技には見えませんが」 「でも、いくらなんでもこれって……」 「こういう場合、大阪の人は皆、ツッコミが入るまで、ひたすら『メガネメガネ』をするらしいです。テレビで言っていました」 「うーーーん……」 「メガネ……メガネ……」 おぼつかない足取りで手を前に出してフラフラしているミナへ、もう一度、キュアスパークルが疑わしげな眼差しを向け直す。 ―― と、ちょうどそのタイミングで、弱々しく宙をまさぐりながら前に出たミナの両手の指先が、偶然にもサクっとキュアスパークルの両目に。 …………。 「あんぎゃあーーーッッ!!」 ワンテンポ遅れて地面に倒れたキュアスパークルが、両手で顔を押さえながらゴロゴロ激しく転がりまわる。 「目が、目がぁ~!」 キュアスパークル、実害は全く無いのだが、精神的ダメージの大きさで変身解除。 それを見たキュアアースがショックを受けた。 「ああッ! ひなたっ! わたくしが、あの人に『メガネメガネ』をさせたばっかりに!!」 精神的ダメージは、こちらも大きかったらしい。 自分のせいで、ひなたがこんなひどい目に……。物悲しげに睫毛を震わせ、美しい双眸を伏せる。同時に変身が解けて、風鈴アスミの姿に戻る。 ―― さらに、その姿が透けていく。まるで、この世界から消えてしまうみたいに。 アスミの身体は、炭素を主として構成される人間と同じではない。 身体の素(もと)になっているのは風のエレメント ―― すなわち精霊であり、普段は完全なほどに人間を模していても、心の揺らぎ方によっては、このように物理的な在り方から外れてしまうコトもある。 アスミの姿がほぼ透明になったところで、ようやく頭の上にずり上がっている眼鏡に気付いたミナ。眼鏡を掛け直して、前を見る。偶然にも視線の先にいたのは、この状態のアスミであった。 「ひえッ! 幽霊ッッ!?」 驚いて仰け反ってバランスを崩し、後頭部から勢いよく後ろに倒れこんでいく。その先にあるのは、地面ではなく、そこに転がっている平光ひなたの柔らかな胴体だった。 ―― ゴスッ。 固い後頭部のブローが、見事にひなたのみぞおちに叩き込まれる。 「ぐふっっ!」と、ひなたが押し潰されたみたいな息を洩らし、そして動かなくなった。 ……少し離れた場所で、のどかたちと共に一部始終を見ていたラテが、「くぅ~ん」と鼻を鳴らした。 のどかとラビリンが一緒に、ゆっくりと視線を動かす。 ―― いまだ腹筋を崩壊させているちゆを揺すりながら、「しっかりするペエ! ちゆっ」と泣きそうな声で呼びかけているペギタン。 ―― 完全に沈黙したひなたを前に焦っているニャトラン。 ―― 見え方がかなり薄くなってきたアスミ。 状況についていけていないツナグが、のどかを見上げて訊いた。 「ど、どうなってるの、一体……」 どう答えていいか分からず、やや顔を引き攣らせている彼女に代わって、ラビリンが端的に説明した。 「プリキュアが壊滅したラビ」 「…………。だいじょうぶなの、それ?」 そう問われると、ラビリンも沈黙で返すしかなかった。 風が吹いた。先程の妙な風とは違う、木々の匂いをはらんだ涼やかな風。 それに吹かれて、紙が一枚ガサガサと地を這うように飛んできた。 のどかが尻もちを着いた姿勢のまま、紙に手を伸ばした。 見てみると、捜索用のチラシだった。 『メガビョーゲンを探しています 今朝、生み出したばかりの切り株っぽい外見のメガビョーゲンです 運動神経が高く、ボディも頑丈な期待株ですが 地球を蝕むのを面倒くさがって、どこかに行ってしまいました でも、やる気を出せば、必ず良い結果を出せる奴だと信じています! お心当たりのある方は、こちらまで(↓) 連絡先 TEL.〇〇〇 ― 〇〇〇〇......... グアイワル 』 内容を読み終えたのどかが、ふと、ツナグの視線に気付く。「何でもないよ」と笑ってチラシを仕舞った。短時間に色々ありすぎて、疲れてしまったのかもしれない。少しだけ考えることをやめて、静かに目を閉じる。 木々の匂いを運んでくれる風の涼やかさが、うなじを撫でて気持ちよかった。 「生きてるって感じ~~」 『映画ヒーリングっど♥プリキュア Connected World』 <前編>5へ